矯正歯科治療と他の病気の治療との違いについて述べます。 一般的な病気、そして歯科では虫歯や歯周病などは、早く見つけて早く治療にとりかかれば、「早く簡単に治る」のが普通です。
それでは、矯正歯科治療(不正咬合の治療)はどうなのでしょう?
子供の時(小学生)に治療を受けたとしても、その後「大人になってからもよい歯並びのまま」になっているとは限りません。むしろそのような場合は少ないでしょう。矯正歯科治療の終了は、完全に永久歯が生えそろい、顎の骨の成長(身長の伸びとおおよそ同じです)が終了した時点となります。つまり、高等学校卒業以後です。
最近、「小児矯正」という言葉を耳にしたり見たりしますが、小学生の時だけ矯正歯科治療をしていた場合、大人の歯(永久歯列)に生えかわった時にどうするのだろうと思います。小学生の時の限定した治療の歯並びがそのまま中学、高校、成人になるまで続くことは少ないでしょう。そのため、矯正歯科専門医院では、小児から成人になるまでの一連の治療を行います。
要約すると、不正咬合の治療には、症状により子供の頃から治療を開始しなければならない場合や、大人になってからでも十分治療が可能な場合もあります。早めに矯正歯科専門医院での診察をお勧めします。
■大人になってから十分治せる例(むしろその方が良い例)
顎の骨に問題がなく,凸凹のみの場合(叢生)
主訴 |
叢生 |
診断 |
アングル1級 叢生 |
年齢 |
22歳 |
装置 |
エッジワイズ装置 |
抜歯部位 |
上顎第一小臼歯.下顎第一小臼歯 |
治療期間 |
2年 |
治療費 |
60万円 |
矯正治療のリスク |
齲蝕,歯周病,疼痛,歯根吸収,後戻りの可能性 |
■小学生時に初期治療をする必要のある例
受け口(下顎前突)
治療前 9歳
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初期治療終了時 10歳 その後、しばらく矯正歯科治療の休み期間あり
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最終治療後 16歳
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主訴 |
受け口 |
診断 |
アングル3級 反対咬合 |
年齢 |
9歳 |
装置 |
リンガルアーチ.エッジワイズ装置 |
抜歯部位 |
非抜歯 |
治療期間 |
初期治療1年.最終治療2年 |
治療費 |
70万円 |
矯正治療のリスク |
齲蝕,歯周病,疼痛,歯根吸収,後戻りの可能性 |
■小学生時に初期治療をする必要のある例
出歯(顎の骨自体の上顎前突)
主訴 |
出歯 |
診断 |
アングル2級 過蓋咬合 |
年齢 |
11歳 |
装置 |
ヘッドギア.エッジワイズ装置 |
抜歯部位 |
非抜歯 |
治療期間 |
初期治療2年.最終治療2年 |
治療費 |
70万円 |
矯正治療のリスク |
齲蝕,歯周病,疼痛,歯根吸収,後戻りの可能性 |
*矯正歯科治療を成功させるためのヒント
小学生半ばまでに「矯正歯科医院」でのチェックを受けておくこと。
そうすれば,治療時期を逃さないでしょう。
誰でも歯は一生を通して少しずつ動いています。
大人になったからといって、その位置に留まっている訳ではありません。矯正歯科治療は、動く歯をうまくコントロールして正しい位置に移動させます。
その結果、きれいな歯並びと、良い咬み合わせが得られます。歯並びは、口元にも大きな影響を与えます。
■当院での治療例(八重歯)
主訴 |
叢生 |
診断 |
アングル1級 叢生 |
年齢 |
20歳 |
装置 |
エッジワイズ装置 |
抜歯部位 |
上顎第一小臼歯,下顎第一小臼歯 |
治療期間 |
2年 |
治療費 |
80万円 |
矯正治療のリスク |
齲蝕,歯周病,疼痛,歯根吸収,後戻りの可能性 |
通常の矯正歯科治療(外科手術を伴わない場合)では、顔の形そのものが変わる事はありません。
しかし、前歯が正しい咬み合わせになれば、口元の感じは大きく変化します。「出っ歯」や「受け口」を治した場合がそうです。
■治療例:出っ歯(上顎前突)
この例は、上下の顎の骨の大きさにズレがあり、成長発育の旺盛な小学生の時から矯正歯科治療を始めました。その結果、顎の骨の成長コントロールができ、歯を抜かずに治りました。
顎のバランスが良くなり正しい咬み合せになると、口元は大変きれいになります。
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治療前
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治療後
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主訴 |
出っ歯 |
診断 |
アングル2級 |
年齢 |
10歳 |
装置 |
ヘッドギア.エッジワイズ装置 |
抜歯部位 |
非抜歯 |
治療期間 |
初期治療2年.最終治療2年 |
治療費 |
80万円 |
矯正治療のリスク |
齲蝕,歯周病,疼痛,歯根吸収,後戻りの可能性 |
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顎(あご)が小さく写真の様に引っ掛かって正しく生えなければ、抜いた方が良い事が多いでしょう。
しかし、顎(あご)の骨の大きさや歯の位置によっては、親知らずを抜く事はなく、必要な歯として十分に咬む機能を果たす事ができます。
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前歯は非常に凸凹していますが、親知らず(矢印部分)は十分萌出しています。凸凹の原因となっている第一小臼歯を抜いて、矯正歯科治療をしました。 |
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親知らずも含め、全ての歯がきちんと咬む機能を果たしています。 |
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この親知らず(矢印部分)は、十分なスペースがあったため、真っ直ぐに生える事ができました。
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主訴 |
叢生 |
診断 |
アングル1級 |
年齢 |
20歳 |
装置 |
エッジワイズ装置 |
抜歯部位 |
上顎第一小臼歯.下顎第一小臼歯 |
治療期間 |
2年 |
治療費 |
80万円 |
矯正治療のリスク |
齲蝕,歯周病,疼痛,歯根吸収,後戻りの可能性 |
- 01. 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。
- 02. 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 03. 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 04. 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 05. 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- 06. ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- 07. ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 08. 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 09. 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 10. 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 11. 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 12. 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 13. 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 14. 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 15. 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- 16. あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 17. 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 18. 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
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